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研究紹介

当研究室で得られた研究成果の一部をご紹介します。
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研究ハイライト一覧

[2021年03月]
完全二次元カゴメ格子をもつ配位高分子で実現する新奇な超伝導状態を発見Topへ

  完全な二次元カゴメ格子をもつ配位高分子において、種々の超伝導特性を測定することで、新奇な超伝導状態が実現していることを明らかにしました。この結果は、当時大学院生であった竹中さん(現NTT物性科学基礎研究所)や現在博士課程に在籍中の石原さんが中心になって行った成果であり、東大物性研究所、東北大学、中国科学院との共同研究であり、Science Advances誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2019年7月]
近藤絶縁体YbB12において電荷を持たない中性フェルミオンを観測Topへ

 近藤絶縁体であるYbB12において、電荷を持たない中性フェルミオンの存在を明らかにしました。YbB12は電気を流さない絶縁体であるにも関わらず、金属状態と似た熱伝導率と比熱を示すことが分かりました。 本研究成果は京都大学、茨城大学、米国ミシガン大学、米国ロスアラモス国立研究所との研究成果で、博士課程の田中さんと、水上助教が寄与を果たし、Nature Physics誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2018年7月]
蜂の巣格子を持つ磁性絶縁体α-RuCl3においてマヨラナ粒子の存在を検証Topへ

 蜂の巣格子を持つ磁性絶縁体であるα-RuCl3において、マヨラナ粒子の存在を示しました。粒子と反粒子が同一である「マヨラナ粒子」は近年様々な系において探索されております。 本研究においては、キタエフ模型と呼ばれる量子スピン模型の候補物質であるα-RuCl3において、磁場中で熱ホール電導度が量子化されることを観測することで、マヨラナ粒子の存在を示しました。 本研究は、京都大学、東京工業大学との共同研究で、Nature誌に掲載されました。 本研究には、水上助教と大学院生の田中さんが寄与を果たしました。詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2018年7月]
ファンデルワールス型超伝導体NaSn2As2の超伝導対称性を決定Topへ

 層状構造を有する化合物は銅酸化物超伝導体や鉄系超伝導体をはじめとして、魅力的な物性が出現する格好の舞台です。 2017年に新たに発見された超伝導体であるNaSn2As2は、SnAs層を伝導層として層状構造を有する物質であり、その超伝導発現機構に興味が持たれます。 またこの物質は、層間がファンデルワールス力で結合していることから機械的に厚さ数 nmまで薄くすることが可能であるという特徴があり、次元性を制御した上での物性研究の舞台としても興味深い物質です。
 今回我々は、NaSn2As2の超伝導ギャップ構造の決定を目的として、低エネルギーの準粒子励起に敏感な測定である磁場侵入長測定を40 mKの極低温まで行いました。 磁場侵入長の逆数を2乗した値は超伝導電子密度と比例関係にあるため、その温度依存性は超伝導ギャップの構造について重要な知見を与えます。 測定の結果、磁場侵入長の値は指数関数的な振る舞いを示すことが明らかになりました。これは、超伝導ギャップ構造にノードを持たないフルギャップ超伝導であることを意味します。 一方で、この系は非常に短い平均自由行程を持つこと、超伝導電子密度の温度依存性がdirty limitにおける理論曲線とよく一致することから、原子レベルで非常に散乱が強い系であることも明らかになりました。
 この結果は大学院生の石原さんが中心となって行った実験による成果で、首都大学東京、大阪大学、仏エコール・ポリテクニークとの共同研究です。 本成果はPhys. Rev. B誌に掲載されました。

"Evidence for s-wave Pairing with Atomic Scale Disorder in the van der Waals Superconductor NaSn2As2"
K. Ishihara, T. Takenaka, Y. Miao, O. Tanaka, Y. Mizukami, H. Usui, K. Kuroki, M. Konczykowski, Y. Goto, Y. Mizuguchi, and T. Shibauchi
Phys. Rev. B 98, 020503(R) (2018); arXiv:1805.12422.

[2017年10月]
物理的圧力と化学的圧力の組み合わせによる新しい高温超伝導相の発見 Topへ

 鉄系超伝導体のセレン化鉄において、物理的圧力と化学的圧力の組み合わせにより、新しい高温超伝導相を発見しました。 この結果は大学院生の松浦さんらが物性研の上床研究室のキュービックアンビルセルを用いて行った実験による成果で、量子科学技術研究開発機構、日本原子力研究開発機構、京都大学等との共同研究です。 Nature Communications誌に掲載されました。詳しくはニュースリリースをご覧ください。

11月17日付の科学新聞2面に紹介記事が掲載されました。

"Maximizing Tc by tuning nematicity and magnetism in FeSe1-xSx superconductors"
K. Matsuura, Y. Mizukami, Y. Arai, Y. Sugimura, N. Maejima, A. Machida, T. Watanuki, T. Fukuda, T. Yajima, Z. Hiroi, K. Y. Yip, Y. C. Chan, Q. Niu, S. Hosoi, K. Ishida, K. Mukasa, S. Kasahara, J.-G. Cheng, S. K. Goh, Y. Matsuda, Y. Uwatoko, and T. Shibauchi
Nat. Commun. 8, 1143 (2017); arXiv:1704.02057.

[2017年8月]
レアアース化合物における新奇な超伝導機構 Topへ

 レアアース超伝導体CeCu2Si2において、超伝導秩序パラメータに符号変化がないことを明らかにし、磁気揺らぎ以外の新しい超伝導機構の存在を明らかにしました。 この結果は大学院生の竹中さんによる成果で、京都大学、英ブリストル大学、仏エコール・ポリテクニーク、独マックスプランク研究所との共同研究です。 Physical Review Letters誌に掲載され、Editors' Suggestionに選出されました。詳しくはニュースリリースをご覧ください。

"Full-Gap Superconductivity Robust against Disorder in Heavy-fermion CeCu2Si2"
T. Takenaka, Y. Mizukami, J. A. Wilcox, M. Konczykowski, S. Seiro, C. Geibel, Y. Tokiwa, Y. Kasahara, C. Putzke, Y. Matsuda, A. Carrington and T. Shibauchi
Phys. Rev. Lett. 119, 077001 (2017) (Editors' Suggestion); arXiv:1705.06075.

[2017年6月]
38年を経て明らかになった非従来型超伝導の「先駆け」物質の電子状態 Topへ

 重い電子系超伝導体CeCu2Si2の超伝導対称性が長年信じられてきたd波ではなくs波であることを明らかにしました。 この結果は京都大学、物性研究所、英ブリストル大学、仏エコール・ポリテクニーク、独マックスプランク研究所との共同研究で、竹中さんが大きな寄与を果たし、Science Advances誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

"Fully Gapped Superconductivity with No Sign Change in the Prototypical Heavy-Fermion CeCu2Si2"
T. Yamashita, T. Takenaka, Y. Tokiwa, J. A. Wilcox, Y. Mizukami, D. Terazawa, Y. Kasahara, S. Kittaka, T. Sakakibara, M. Konczykowski, S. Seiro, H. S. Jeevan, C. Geibel, C. Putzke, T. Onishi, H. Ikeda, A. Carrington, T. Shibauchi, and Y. Matsuda
Sci. Adv. 3, e1601667(2017); arXiv:1703.02800.

[2016年7月]
高圧力により鉄系超伝導物質の転移温度が4倍以上に上昇する謎を解明 Topへ

 これまでの研究で、セレン化鉄は鉄系超伝導体の中でも特異な物性を示すことが知られており、特に最近に発見された超伝導転移温度が圧力下で4倍以上にまで上昇する起源は物性物理学の大きな謎の一つでした。 最近得られた純良単結晶試料を用い、物性研上床研究室および中国IOPなどと共同で、10万気圧以上の高圧までの物性測定を行い、下図のような電子状態相図を完成させました。 常圧では磁気的秩序を示しませんが、圧力をかけると2万気圧付近で突如磁性が出現し、磁性の発現する温度が4万気圧程度まで上昇すること、更に高圧の6万気圧程度でこの磁性が消失する圧力領域で急激に超伝導になる温度が高くなることが本研究で初めて明らかになりました。 これは、磁性が超伝導を阻害しており、磁性が消失することで高い転移温度を持つ超伝導が現れることを意味しています。このような振る舞いは銅酸化物高温超伝導体にも共通性がみられ、高温超伝導の起源の解明の糸口となります。

ニュースリリースはこちら。日刊工業新聞に紹介記事が掲載されました。

"Dome-Shaped Magnetic Order Competing with High-Temperature Superconductivity at High Pressures in FeSe"
J. P. Sun, K. Matsuura, G. Z. Ye, Y. Mizukami, M. Shimozawa, K. Matsubayashi, M. Yamashita, T. Watashige, S. Kasahara, Y. Matsuda, J.-Q. Yan, B. C. Sales, Y. Uwatoko, J.-G. Cheng, and T. Shibauchi
Nat. Commun. 7, 12146 (2016); arXiv:1512.06951.

[2016年7月]
鉄系超伝導体に見つかった新たな非磁性の電子液晶状態とその特異点 Topへ

 宇宙の成り立ちを知るのにブラックホール(一種の特異点)を調べることが役立つように、物質の電子状態の起源を解明するためには、その特異点(臨界点)を調べることが重要であることが知られています。 特に、高温超伝導の発現機構は、従来の格子振動ではない、電子の自由度をベースにした新しいメカニズムが提唱されており、電子状態相図における電子秩序の臨界点と超伝導との関係を明らかにすることが大きな課題となっています。 今まで、重い電子系化合物などのさまざまな物質で磁性秩序の臨界点が調べられ、絶対零度における臨界点(量子臨界点)近傍で発達した揺らぎを媒介にした超伝導が議論されてきました。 今回、鉄系超伝導体FeSeのSeサイトの一部を等電荷のSで置換した系において、磁性を持たない新しい電子秩序の量子臨界点が存在することを明らかにしました。 この臨界点では、電子応答が面内異方性を示す液晶のような状態が揺らいだ新しいタイプの特異点となっており、超伝導の新たなメカニズムを検証する上で重要な系となることが期待されます。

ニュースリリースはこちら。日刊工業新聞および科学新聞に紹介記事が掲載されました。

"Nematic Quantum Critical Point without Magnetism in FeSe1-xSx Superconductors"
S. Hosoi, K. Matsuura, K. Ishida, H. Wang, Y. Mizukami, T. Watashige, S. Kasahara, Y. Matsuda, and T. Shibauchi
Proc. Natl. Acad. Sci. USA doi:10.1073/pnas.1605806113 (2016); arXiv:1604.00184.

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