芝内研究室に興味のある学生の方へ

当研究室では非従来型超伝導や新奇な相転移現象など、物質中の電子が示す強い相互作用と量子効果により現れる新しい量子凝縮相の物理学的な研究を行っています。 ホームページのアドレスのqpmは、芝内研究室で研究を行っている物質中に現れる様々な量子相"Quantum Phases of Matter"の頭文字をとったものです。

非従来型超伝導

超伝導の標準理論であるBCS理論では説明ができない超伝導体の機構解明を目指しています。

量子臨界現象

圧力や組成等のコントロールパラメータで秩序相を抑制した際に出現する量子臨界現象の研究を行っています。

電子ネマティック相

電子系が自発的に回転対称性を破る電子ネマティック状態の起源や、高温超伝導との関連性を研究しています。

News & Topics

Publication,発表リストは随時更新しています。

最近の研究ハイライト

[2023年2月14日] カゴメ格子をもつ超伝導体CsV3Sb5において不純物効果を利用して超伝導ギャップ構造を検証

近年発見された超伝導体であるCsV3Sb5では、カゴメ格子とよばれる興味深い結晶構造に起因する多様な物性が注目を集めています。 この研究では、超伝導状態における超伝導ギャップ構造の対称性を検証するため、系統的に非磁性不純物を導入した試料で磁場侵入長などを測定しました。 その結果、CsV3Sb5では非従来型にも関わらず不純物導入に対して変化しにくい超伝導状態が存在していることが示され、符号反転のないs波のギャップ構造が示唆されました。 超伝導ギャップの対称性は超伝導のメカニズムを解明する上で非常に重要であり、これまで複数の可能性が示されている中で議論の進展が期待できます。 この結果は、大学院生である六本木さんらが中心になって行った成果であり、物性研究所、フランスのエコール・ポリテクニークおよび米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校との共同研究です。 本成果はNature Communications誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2022年5月9日] 鉄系超伝導体Fe(Se,Te)において量子液晶の量子臨界点で超伝導転移温度が上昇することを解明

代表的な非従来型超伝導体である鉄系超伝導体では、電子ネマティック状態とよばれる量子液晶状態と超伝導メカニズムとの関係が注目されています。 しかしながら、多くの鉄系超伝導体ではこの状態が磁気秩序を伴って現れるため、純粋なネマティック状態の研究は限られていました。 この研究では、例外的に磁気秩序をもたない系であるFeSe1-xTexを系統的に合成し、弾性抵抗測定によりネマティック状態の性質を探索しました。 その結果、ある置換量においてネマティック秩序に起因する量子臨界点が存在し、これに対応して超伝導転移温度がドーム状に上昇することを明らかにしました。 この結果は、当時大学院生であった石田さんらが中心になって行った成果であり、米国科学アカデミー紀要に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2022年2月1日] キタエフ量子スピン液体の候補物質α-RuCl3において物質内部でのマヨラナ粒子の性質を解明

キタエフ模型とよばれる量子スピン模型では、粒子と反粒子が同一であるマヨラナ粒子の存在が理論的に示されおり、これを実現する物質が探索されています。 候補物質の一つである蜂の巣格子をもつ磁性絶縁体α-RuCl3では、これまでエッジ状態におけるマヨラナ粒子のふるまいが報告されていましたが、物質内部のバルク状態の性質は明らかになっていませんでした。 この研究では磁場中で精密な比熱測定を行い、比熱の磁場方向依存性がキタエフ模型の理論的な予測と非常によく一致することを明らかにしました。 この結果は、当時大学院生であった田中さんらが中心になって行った成果であり、東京工業大学、大阪大学、京都大学、韓国科学技術院との共同研究です。 本成果はNature Physics誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2021年12月10日] ハーフホイスラー超伝導体LuPdBiにおいてスピン七重項を含むクーパー対状態を発見

ハーフホイスラー超伝導体LuPdBiにおいて、磁場侵入長などの測定により、これまでの枠組みを超えたスピン七重項状態と一重項状態が混成したスピン構造をもつクーパー対が実現していることを明らかにしました。 この結果は、当時大学院生であった石原さん(2022年度より助教)らが中心になって行った成果であり、物性研究所、フランスのエコールポリテクニーク、ポーランド科学アカデミーとの共同研究です。 本成果はPhysical Review X誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2021年3月17日] 完全二次元カゴメ格子をもつ配位高分子で実現する新奇な超伝導状態を発見

完全な二次元カゴメ格子をもつ配位高分子において、種々の超伝導特性を測定することで、新奇な超伝導状態が実現していることを明らかにしました。この結果は、当時大学院生であった竹中さん(現NTT物性科学基礎研究所)や現在博士課程に在籍中の石原さんが中心になって行った成果であり、東大物性研究所、東北大学、中国科学院との共同研究であり、Science Advances誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2021年1月15日] 量子液晶と関係した新しい超伝導状態を発見

鉄系超伝導体のセレン化鉄において、元素(テルル)置換量を系統的に変化させて圧力実験を行った結果、この物質では量子液晶状態と密接に関係した超伝導が現れることを発見しました。この結果は、現在博士課程に在籍中の向笠さんが物性研究所の上床研究室のキュービックアンビルセルを用いて行った実験による成果で、高エネルギー加速器研究機構との共同研究です。Nature Communications誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2019年7月2日] 近藤絶縁体YbB12において電荷を持たない中性フェルミオンを観測

近藤絶縁体であるYbB12において、電荷を持たない中性フェルミオンの存在を明らかにしました。YbB12は電気を流さない絶縁体であるにも関わらず、金属状態と似た熱伝導率と比熱を示すことが分かりました。 本研究成果は京都大学、茨城大学、米国ミシガン大学、米国ロスアラモス国立研究所との研究成果で、博士課程の田中さんと、水上助教が寄与を果たし、Nature Physics誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2018年7月12日] 蜂の巣格子を持つ磁性絶縁体α-RuCl3においてマヨラナ粒子の存在を検証

蜂の巣格子を持つ磁性絶縁体であるα-RuCl3において、マヨラナ粒子の存在を示しました。粒子と反粒子が同一である「マヨラナ粒子」は近年様々な系において探索されております。 本研究においては、キタエフ模型と呼ばれる量子スピン模型の候補物質であるα-RuCl3において、磁場中で熱ホール電導度が量子化されることを観測することで、マヨラナ粒子の存在を示しました。 本研究は、京都大学、東京工業大学との共同研究で、Nature誌に掲載されました。 本研究には、水上助教と大学院生の田中さんが寄与を果たしました。詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2018年7月13日] ファンデルワールス型超伝導体NaSn2As2の超伝導対称性を決定

2017年に新たに発見されたNaSn2As2という超伝導体において低エネルギーの準粒子励起に敏感な測定である磁場侵入長測定を40 mKの極低温まで行った結果、超伝導ギャップ構造にノードを持たないフルギャップ超伝導であることを明らかにしました。 この結果は大学院生の石原さんが中心となって行った実験による成果で、首都大学東京、大阪大学、仏エコール・ポリテクニークとの共同研究です。 本成果はPhys. Rev. B誌に掲載されました。

[2017年10月26日] 物理的圧力と化学的圧力の組み合わせによる新しい高温超伝導相の発見

鉄系超伝導体のセレン化鉄において、物理的圧力と化学的圧力の組み合わせにより、新しい高温超伝導相を発見しました。 この結果は大学院生の松浦さんらが物性研の上床研究室のキュービックアンビルセルを用いて行った実験による成果で、量子科学技術研究開発機構、日本原子力研究開発機構、京都大学等との共同研究です。 Nature Communications誌に掲載されました。詳しくはニュースリリースをご覧ください。

11月17日付の科学新聞2面に紹介記事が掲載されました。

[2017年8月15日] レアアース化合物における新奇な超伝導機構の解明

レアアース超伝導体CeCu2Si2において、超伝導秩序パラメータに符号変化がないことを明らかにし、磁気揺らぎ以外の新しい超伝導機構の存在を明らかにしました。 この結果は大学院生の竹中さんによる成果で、京都大学、英ブリストル大学、仏エコール・ポリテクニーク、独マックスプランク研究所との共同研究です。 Physical Review Letters誌に掲載され、Editors' Suggestionに選出されました。詳しくはニュースリリースをご覧ください。

[2017年6月23日] 38年を経て明らかになった非従来型超伝導の「先駆け」物質の電子状態

重い電子系超伝導体CeCu2Si2の超伝導対称性が長年信じられてきたd波ではなくs波であることを明らかにしました。 この結果は京都大学、物性研究所、英ブリストル大学、仏エコール・ポリテクニーク、独マックスプランク研究所との共同研究で、竹中さんが大きな寄与を果たし、Science Advances誌に掲載されました。 詳しくはニュースリリースをご覧ください。

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